春蘭の育て方


ここでは銘柄品では無い「ジイババ」レベル春蘭の育て方を簡単にご紹介します。

ご注意事項

ここでご紹介するのは高価な銘柄品の育て方ではありません。
値の付かない一般的なジイババクラスの育て方です。
また、春蘭自体の個体差や個々の適応能力、病気、並びに温度や湿度、気候の違い、
年齢、日照状況など個々の栽培環境の違いにより必ずしもここで紹介する栽培方法で
同じ結果が得られる訳では在りません。気候の違いや春蘭自体の固体差により
枯れたり弱ったり花付きが良くなかったりする事もございます。予めご承知おき下さい。

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春蘭の育て方
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シュンランその自生地での特徴と簡単な春蘭の育て方ポイント


春蘭の特徴
  1. 春蘭は「直射日光」の強い暑い環境は嫌う
  2. 遮光率の高い環境下なら根も貯水タンクの特徴を持つ為、割と渇水には強い。
  3. 冬場、冷たく乾いた寒風吹き荒ぶ場所も嫌う。
  4. 根は地面を掴む様に拡がるだけで、固く締まった土中に深くもぐる事は無い。
  5. 極端に乾燥した固い土質、通気性や水捌けの悪い土質や地形を嫌う。
つまり、夏でも然程暑く無く、冬でもそれほど寒くない、通気性も良くて適度に湿度もある、
そんな理想的な環境下で静かに省エネ生活を送っている、という植物だと言えます。

春蘭の育て方のヒントともなる自生地での状態

春蘭は自然界では雑木林など、日中でも木漏れ日が差す程度で50%前後の遮光率のある、
夏でも割と涼しい、光は差すが直射日光は当たらない環境にしか生えていません。つまり、
タンポポや向日葵のような、焼け付く直射日光下で生える植物とは違う事が解かります。
雑木が全伐された為”日覆い”が無くなり直射日光下に剥き出しにされた株を見ると、
本来深い緑色をしていた葉は薄い黄緑色へ変色し、やがて茶色に枯れてしまいます。
これは葉から蒸発する水分を減らす為の彼らの適応で、
その状態でも彼らの特徴でもある貯水タンクの機能を持った根やバルブはまだ生きていますが、
その環境のままではやがて本当に枯れてしまいます。
よって渇水には割と強いとは言え、それはあくまで夏でも涼しく余計な水分を
奪われにくい雑木林の下など、本来彼らが求める環境下での事です。

またクヌギやブナ、コナラ等の落葉樹で構成された雑木林下を観察してみると、、
秋冬、大量の落ち葉により春蘭はかなりの部分がふんわりと埋まり、、
直接的な寒く乾いた外気や寒風、冷たい積雪から守られている事もわかります。
被さった落ち葉の上に雪が掛かった状態でも、
それはまるで”カマクラの中の状態”に近く、
直接寒風、雪の吹き荒ぶ剥き出しの道端とはかなり違う守られた環境にある、
と言い換える事も出来ます。春蘭の育て方のヒントになります。

そして根ですが、自生地(自然界)では地面深く潜る事は無く、
地面に対して殆んど平行に拡がっています。
地面を掴んでいる、と言った表現が解かり易いかも知れません。
そしてその拡がった根の上に腐葉土、落ち葉がふんわりと通気性良く被さっている、
という状態になっている事が多くの自生地で見受けられます。
また多くの場合、水捌けの良さそうな斜面に生えている事からも、
あまり常時水気の多い場所は嫌っている事も解かります。

春蘭と同じ東洋蘭でフウラン(富貴蘭)という、
これまた春蘭以上に愛好家の多い蘭がありますが、
この富貴蘭などは皆さんご存知の通り自然界では何と「樹の上」が生活の場所であり、
遮光率、水捌け、通気性等これら特徴を究極に実現するカタチで自然界に存在します。
また樹の上だとウサギ等による食害の危険性も低くなる、といったメリットもある事でしょう。

話題が逸れました。春蘭の育て方に戻りましょう。

これら自生地での状況から春蘭育て方のポイントとしての最低条件とは、、

春夏


  • 1)ヨシズや遮光ネットで直射日光を50%程度遮断した環境を用意する。
  • 2)通気性(空気の流れ)の良い場所に置いてやる。
  • 3)水は2日に1回程度、朝か夕方のどちらかに与える(夏は夕方がオススメ)。

秋冬


  • 4)遮光度20%前後へ変更(秋冬は落葉の為、雑木林下も光量&地温が上がる)
  • 5)秋冬の乾いた冷たい寒風が直接春蘭に当たり凍らせない様に工夫
  • 6)水は1週間に1回程度(午前中)。真冬は2〜3週間に1回程度、若しくはやらない。

鉢と用土



鉢=縦長い蘭鉢
用土=鹿沼土、日向土、桐生砂など、通気性と水捌けの良い土。
混合でも単品でも可。

「植え込み方」

蘭鉢に底から「大粒⇒中粒⇒小粒」と入れればいいでしょう。
押さえつけて土を締めたりないように。

重要補足


(1)(2)(4)(5)に関しては出来るだけ自然の雑木林の環境を再現する事が目的
となります。
但し、鉢の置き場所はやわらかい朝日の当たる風通しのいい場所で
ヨシズなどで遮光してやるのがいいでしょう。西陽はキツイので避けます。

また(3)の春夏の水遣りに関してですが、春蘭はあまり水を頻繁に与え過ぎると、
鉢の中に水が溜まってしまったり用土が常に湿っていては、
春夏だと「根腐れ」を起こす危険性
が上がります。
春や秋は2〜3日に1回、真夏でも1日1回として下さい。
もし根腐れを起こし枯れた場合、それは用土が通気性、
水捌けの悪い用土か、或いは水の量がいつも多かった為と考えて下さい。

そもそも春蘭は渇水には強い上、過湿には弱い種類です。
自然界でも梅雨の季節でも無い限りそんなに頻繁に雨は降りませんし、
夏場でも毎朝早朝に夜露、極稀に夕立ぐらいしか水分は補給出来ない自然環境で
日本の野生春蘭はジュウブン生きています。

但し、水遣りは縦長い蘭鉢の底から水が抜けるまで与える事がポイントでもあります。
何故ならば自然界では春蘭の根は本来地面にほぼ平行に拡がっており、
一瞬の夕立でも何とか地表近くの水分を摂取する事が出来るようになっていますが、
観賞用の縦長の蘭鉢に植え込んだ場合、
自然界とは違い不自然に深く垂直に根を埋める事となる為、
根の部分にまで水が届かず表面で蒸発してしまっている事がある為です。
その状態が1ヶ月も続くと夏場は枯れるでしょう。
でもやりすぎて蘭鉢の受け皿に水が溜まったりしない様に注意して下さい。
用土の中で根が水浸しの状態で温度が上昇していく事は根を煮詰めている事と同じであり、
根腐れのもととなります。

尚、真夏は夕方の水遣りをおすすめします。
午前中水を与えた後、午後にかけて真夏の温度で用土温度が上昇、
根が蒸れ腐る危険性を回避する為です。
真夏は夕方の水遣りなら夜にかけて温度も徐々に下がりますので、
その危険性はほぼ無くなります。

逆に秋冬の水遣りですが、(6)で述べている様に1週間に1回程度として下さい。
地域により寒さや外気温に違いがありますので具体的に何月からとは申せませんが、
特に真冬の水遣り2〜3週間に1回、もしくはやらなくてもいいでしょう。
霜が降りたり水路が凍ったりする時期にあまり水をやると、
その水の為に春蘭の根やバルブの組織細胞が破壊されて腐り枯れる原因となります。
また、春夏とは違い、水は午前中にやる事がいいでしょう。
何故なら車を運転するドライバーなら皆さんご存知だと思いますが、
寒い真冬でも午前中に降った雨は深夜に路面凍結に至る事は少ないのですが、
夕方に降った雨は大概の場合、路面凍結を起こします。
これと同じで午前中の水遣りなら午後にかけて気温が上がり、
根やバルブの凍結腐れのリスクは減りますが、
夕方の水遣りはこれから気温がどんどん下がっていく時間帯の水遣りとなり、
その後凍ったり霜になる時間帯の水遣りとなり危険だからです。

(5)に関してですが、霜を付着させたり凍らせたりしない限り、
あまり心配しなくてもいいでしょう。春蘭は暑い西日本から寒い東北地方にも自生しています。

また、春といっても1月や2月、3月は最も凍結の危険な時期ですので、
真冬と考えて世話する事です。
又、秋と言っても地域によっては9月や10月でも暑い地域もあります。
こういう地域は真夏の育て方で対処する事が必要になります。

用土が締まってしまうため植え替えは1〜2年に1回ぐらいでしょう。
春か秋が植え替えの時期でしょうか。

春蘭の育て方はこんな感じでじゅうぶん育ちます。
但し、冒頭で述べた様な各々の違いによりこの限りだとは一切保証出来かねます。
尚、これは自生地での現状や、実際に栽培実験を続けた上での見解で、
統計をとった訳ではございませんが、
花に関しては日当たりが多めの場所の方が、
遮光率の高い眩めの作場より若干花は咲きやすいと感じられます。

⇒「春蘭(シュンラン)東洋蘭」index

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